壱千九 武蔵野操車場と北上操車場
平成二十九丁酉年
七月十六日(日)
1000回で『作家Xの「春と修羅」』を特集した。その派生で『作家Xの「春と修羅 第二集」』を作成中に、北上川がたくさん出て来た。北上川について少し調べたが、それより北上操車場が気になったので、今回「武蔵野操車場と北上操車場」を特集することにした。最初のきっかけとは似ても似つかない内容になった。川の呼びかた風に云ふと、「春と修羅」水系「春と修羅 第二集」川支流の「武蔵野操車場と北上操車場」だらうか。
私は南浦和に住んでゐたので武蔵野操車場はよく知ってゐる。北上操車場は見たことが無い。どこにあったのかも知らない。それにも関はらず二つを並べたのは、ほぼ同じ時期に完成し同じ時期に廃止になった。稼働したのは十年だった。

七月十七日(月)
武蔵野線の建設中は、武蔵野東線だったか武蔵野西線だったか、南浦和駅はどちらかの始発点と云はれてゐた。今考へると東線と西線の境だから、どちらかの始発点と云ふことは無いのだが、特に気にも留めなかった。南浦和の駅の西側は家がなく、建設中の武蔵野線の高架が白く続いた。
私は武蔵野線の開通する少し前に南浦和へ引っ越した。西口のバス乗り場は田島団地行きのバス停に長蛇の列がいつも出来た。武蔵野線が開通した日にホームまで行ってみた。駅の助役だかが厚紙に武蔵野線開通記念とカラーで印刷されたカードを無料で配った。私も1枚頂いた。
南浦和の出札に向かふ陸橋から浦和車掌区が見える。ここに無差死野線と云ふ30cm四方の貼紙に一時づつ書いたものが数か月貼ってあった。当時の毎日新聞に、機関士の着用するヘッドホンは雑音がしてガッチャマンと呼ばれると云ふ記事が載った。民間企業でも毎年春になるとストライキを行ふ時代だから、この貼り紙に反感を持つ人は誰もゐなかった。

七月十八日(火)
武蔵野線が開通したあと、武蔵野操車場は広大な敷地に茶色の線路が繋がったままだった。基本部分が完成して細かい工事に入ったのだらう。電車の窓から見ると放置されたみたいで、いつになったら使用するのだらうと思った。
インターネットで調べると武蔵野線が開通した一ヶ月後に着工し、その一年五か月後に開設とある。線路だけ繋がったあとも一年近く掛かったため、そのときの光景が記憶に残ったのだった。
茶色の従来客車が一両あった。救援車であらう。常備駅の略号はムソと書かれてゐたと記憶するが、あるいは貨物列車の最後尾を走行する緩急車にムソとあるため類推したのかも知れない。
武蔵野操車場はDE11と云ふ自動運転の機関車を用ゐてゐると読んだことがある。あと、今まではベテランの運転係(操車担当)が若い構内係たちを飲みにつれて行って精神訓話をしたが、構内が自動化されたためベテランの活用法が問題になってゐると云ふ話を読んだことがある。

七月二十三日(日)
自動化された貨車操車場は、武蔵野操車場を何回も見たはずだが記憶にない。武蔵野線の電車が操車場の両端を走り、自動化の装置はかなり内側にあったためかも知れない。
私の記憶に残るのは塩浜操駅だ。操車場の上を横断する陸橋は二車線の車道とその両端に歩道がある。歩道の手すりに足を掛け、敷居の上から操車場を見下ろすと、そこには入替用機関車で色が国鉄とは異なるものがたくさん走ってゐた。あと、10mくらいに亙りレールを左右から挟む装置があった。ガシャガシャと音がするので、突放で走って来る貨車の速度を落とす装置だと思った。
今インターネットで調べると、塩浜操はリニアモーターカーが走って来る貨車の車輪を前後から挟んで速度調整をしたらしい。インターネットで調べると自動化された操車場はこのほかに、郡山(操)、新南陽駅、北上(操)、高崎(操)がある。(操)は操車場の略。

九月二日(土)
東北本線の本社指定組成駅で昭和三十年から六十年代まで続いたものに、青森(操)、長町駅、高崎(操)、大宮駅、田端駅がある。(ここから先は「駅」を省略)
昭和三十年代に入って秋田(操)が昭和三十五年、郡山(操)が昭和四十年に開業し本社指定組成駅。大宮操は昭和三十六年に大宮から独立、田端操も同年に田端から独立した。奥羽本線の秋田(操)は昭和三十九年に貨物扱ひを開始し秋田操になった。
昭和四十年代に入り、郡山(操)が昭和四十年に貨物扱ひを開始し郡山(タ)になり、常磐線のいわき貨物は昭和四十七年に本社指定組成駅として開業し貨物扱ひも開始。(「タ」は貨物ターミナル駅の略)
北上(操)は昭和五十三年開業の局指定組成駅であった。関東地方では武蔵野(操)が昭和四十九年に開業した。
こうしてみると昭和三十年代から四十年代までは、鉄道貨物が急増したことが判る。北上(操)の開業はそれとは別で東北新幹線の開業により、盛岡、北上の組成機能ができなくなったことによる。あと小牛田、一ノ関の貨車中継作業を集約した。(完)

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