壱千五 1.三十七階半を上った、2.特別室内楽コンサート
平成二十九丁酉年
七月八日(土)
火曜日は久しぶりに十二階半を駆け下りて、十二階半を駆け上がった。最近首凝りが酷いためだ。この日から郵便物の集配は私が担当になった。一日に二回一階のポストまで郵便物の受け取りと投函をする。新しい仕事が来た記念に、投函したあと二十五階まで歩いた。だからこの日は三十七階半を上った(降りたのは十二階半)。
十二階半と半端なのは、二十五階の半分を上り下りするためだ。だから十二階と十三階の間の踊り場がいつもの折り返し点になる。エレベータで一階に降りて投函し二十五階まで歩いたら10分掛かった。往復をエレベータだと5分。リフレッシュコーナーで缶コーヒーを飲んだり、一階に煙草を吸いに行くことを考へれば、所要時間は少ない。しかも健康に良い。

一ヶ月くらい前に、やる気を回復するにはどうしたらよいかといふ日経BPだったかの記事があった。一番よいのは三十階降りて三十階上がることだが、そんな奇特な人はゐないからごく短時間昼寝をするのがよい、と云ふのが記事の結論だった。

七月九日(日)
金曜は夕方五時半から一階ロビーで特別室内楽コンサートがあった。毎月一回昼休みに行ふコンサートの大型版で、出演者が五名、演奏時間が七十分と長い。私は郵便物を一階に投函しに行ったついでに少し聴き、事務室に戻り帰宅の準備をしたあと一階に戻り残りを聴いた。
前半5曲は、純クラシックでしかもドイツ古典主義とその伝統を受け継ぐ曲が多かった(と思ふ。私はどれが古典主義でどれがロマン主義かは判らない。ハイドン、バッハの曲以外も、古典主義の影響は受けたやうに思へた。)
「山の音楽家じゅんばん協奏曲」石川亮太編はよかった。「山の音楽家」の旋律の間に、オーボエ(白鳥の湖)、ホルン(モーツァルトのホルン協奏曲)、フルート(アルルの女)、ファゴット(魔法使いの弟子)、クラリネット(クラリネットポルカ)が挿入される。
後半のまづ3曲はクラシック性の低い曲で、このうち3曲は印象に残ることも、不愉快なこともなく、ごく無難な曲だった。この中にはアメリカの大手映画制作会社のメドレーもあり、これが無難に入ることからクラシック性に乏しい曲まで相当許容範囲が広い。
それにも関はらず後半4曲目の「七夕さま」はいただけなかった。現在活躍中の作曲家のオリジナルアレンジだが、原曲の「七夕さま」と比べるとはるかに劣る。元は歌曲だからそのまま演奏したのでは短すぎるし、繰り返しが冗長になる。アレンジが必要だが、原曲と比べてどこが優れたか判らない冗長な曲で、期待外れだった。私の気付かない特長があるのかも知れない。だとしたらそれを説明しなくてはいけない。私は説明すべき特長はないと思ふ。
5曲目は17世紀にハンガリーで流行した舞曲をアレンジしたもので、こちらはリズムに特長があるなどよかっただけに、余計「七夕さま」のアレンジ曲の拙劣が目立った。今回私が最も期待したのは「七夕さま」だっただけに余計落胆した。

七月十日(月)
先週は不審者騒ぎがあった。50代の短パン半そでの男がハーハー息をしながら共有スペースを歩いてゐたと云ふのだ。防災センターに連絡したが、既にその男はゐなかったさうだ。
私が思ふにその男は近所に住む高層ビルマニアだ。西新宿は民家が多いし、民家をまとめて共有地とし、そこにビルとマンションを建てる方法が最近は多い。民家やマンションの住民が高層ビルに来て非常階段を上ったのだらう。(完)

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