85、香港、深セン、広州に行こう
平成ニ十年
四月四日(金)(18年後の香港)
家族で春休みに香港へ行った。安くて楽しいところを選んだ。最初は台湾にしようという話だったが楽しさで香港に決まった。
香港は18年前に行ったことがある。あのときはまだイギリスの植民地だった。当時と比べると地下鉄の路線が倍増したことを除き、それほど変わってはいなかった。
スターフェリーは1ドル70セントで当時もこのくらいの値段だった。
四月五日(土)(落馬洲)
香港と中国の境界は羅湖(ローウー)駅である。18年前はその1つ手前の上水駅が電車の終点だった。羅湖駅へは中国ビザのある人しか乗車できず、機関車が牽引する客車が1日に数往復あるだけだった。
あのときは上水駅で降りて分かりにくいと言われているバス停を灼熱のなかで30分掛けて探し冷房のないバスに乗り落馬洲展望台に行った。田圃や池が眼下に広がりその先に小川が流れていた。はるか向こうに多数のビルが凸凹したピラミッド群のように霞んでいた。あれが深セン経済特区である。
今は羅湖駅まで通勤電車が10分間隔で運行されている。多数の香港人が乗車し出入国窓口が混雑する。そのため昨年、上水駅から落馬洲まで新たに支線を作り、ここでも出入国手続きができるようになった。
羅湖駅と落馬洲駅は今でも出入国者以外は立ち入りができない禁区にある。これらの駅まで行く人は必ずパスポートを持ち中国に入国しすぐの銀行か両替所で香港ドルか日本円を人民元に両替し地下鉄に乗り観光や買い物をしてから香港に戻ろう。
四月七日(月)(深センの街)
旅行書やインターネットによるとは羅湖は治安が悪いらしい。駅で荷物をひったくられた、出入国事務所を出たところでスリにあった、安いといわれ付いていって金を全部取られたという話が載っている。海外に行ったら荷物はしっかりと持ち財布はポケットに入れない話しかけられても無視することが肝要である。治安が悪いといってもアメリカみたいにピストルで撃たれる訳ではない。用心すれば安全である。
出入国事務所を出たらすぐに地下鉄に乗り、科学館駅で降りると市の中心に着く。近くの日系デパートのジャスコに立ち寄るとよい。
四月八日(火)(広州へ)
広州へは深センから新幹線型の列車「和諧号」が15分おきに出ている。深セン駅で簡単に切符を購入できる。香港から直通の客車列車も出ている。こちらも香港の紅(ホン)ハム駅で簡単に切符を購入できるが本数が少ないから売り切れになりやすい。1日に1本、上海と北京西行きが交互に出ている。ホンハム駅では北京西行きが停車していた。車体に160Km/hと書かれていた。
和諧号は中国各地で運行され、カナダのボンバルディアと提携したCRH1、日本の川崎重工と提携したCRH2、ドイツのジーメンスと提携したCRH3、フランスのアルストムと提携したCRH5がある。深セン広州間はCRH1が走る。
切符を買うときは英語を使わず筆談をしよう。アジア人同士が英語を使うことは、アジアの首根っこをアメリカに押さえられることになる。松下電器が社内ネットワークに日立の専用線を借りるようなものである。企業秘密が筒抜けになる。日本の先人たちが苦労して取り入れた漢字文化を有効に活用すべきである。
四月九日(水)(香港の思い出)
18年前に香港に行ったときに屋外の飲食店で、物乞いがテーブルを順番に回ってお金をもらっていた。私のテーブルにも来た。ちょうど5セント貨(約0.8円)があったので少ないとは思ったが思い切って仰々しく手渡したところ、その硬貨を返してきた。受け取ってからもっとくれというのなら2ドルくらいは渡すが返してきたのでそのまま受け取り食事を続けたところあきらめて次のテーブルに行ってしまった。
物乞いがお金を受け取らないのは貿易都市香港が鎖国をするようなものである。一国二制度の香港が来月から共産主義経済に移行すると突然宣言するようなものである。
四月十日(木)(広州駅と広州東駅)
ほとんどの列車は広州東駅が終点である。しかし5本に1本程度広州行きもある。広州東駅はきれいな駅である。一方の広州駅は長距離列車が発着し、大きな荷物を持った人や床に座って列車を待つ人でごった返している。お勧めは広州東駅である。「駅でひどい目に遭ったよ」と感じる人は広州駅で乗降しないほうがいい。
私は広州駅で降りた。改札に大きな荷物を持った人たちが集中し大変な混雑だった。しかし別にひどい目に遭ったとは思っていない。地方から来た人たちのエネルギーを感じた。昭和30年代の上野駅と同じである。
四月十一日(金)(広州市内)
広州には光孝寺、広州博物館、六榕寺、紗面などの観光地がありいずれも地下鉄で行くことができる。紗面は昔の西洋列強の租界で西洋館が並ぶ。地下鉄を降りたあと分かりにくい。通行人に筆談したら、指を指して親切に教えてくれた。紗面の北側に清平路という下町の商店街がある。ここは日本のアメ横みたいでお勧めである。
そのままずっと歩くと下九路、上九路という日本の銀座通りのような繁華街に出る。日本の商品、日本語で書かれた店もある。このことから中国人は決して反日ではないことがわかる。
四月十ニ日(土)(中産階級)
日本、香港、深セン、広州の中産階級の比率を直感で推測してみた。70%、50%、30%、20%くらいだろうか。世界は数十年に亘り中産階級の増大を目的としてきた。
しかしそれはピラミッド型社会を破壊し社会の不安定を招いた。そして地球温暖化も招いた。今後世界が目指すべきは中産階級をなくすことであり、それは石油消費を止めることで達成できる。
親センはどこを見渡しても高層ビルである。しかしそんなはずはない。あちこち探しジャスコの裏側に庶民の街を見つけた。住宅、商店街が続いていた。狭い路地裏を歩いてみた。一目見て日本や香港から来た観光客だと判る人は止めたほうがいい。私の場合は香港の物乞いから金の受け取りを拒絶されるくらいなので、まあ大丈夫だが。
四月十三日(日)(軍事によらない世界秩序を)
中国が資本主義を取り入れたのは、一つは先進国との生活格差であり、二つには経済から来る軍事力の遅れである。
しかし先進国の豊かさは地球破壊と引き換えの砂上の楼閣であり、永続不可能である。これを止めるにはまず軍事力によらない世界秩序を確立しなくてはならない。これは国連の改革で可能であり簡単である。次に日本、中国、インド、イスラム圏などアジア諸国こそ地球温暖化を防止する先頭に立つべきである。
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