私の父は戦前、大東亜省の留学生として中国の北京大学にいた。
アパートに居住していたが公式の住所は日本大使館であり、当時の駐中国日本大使について「陸軍大将で低級な人だった」と語ったことがある。
去年その真相を聞いたところ発言をすでに忘れてはいたが「脅かせば人が何でも従うと思っていたことを言ったのではないかな」と語っていた。
戦後まもなく外務省を退職したが、今日に至るまで中国語の勉強を怠らず中国語歴は60年間に及ぶ。
その父が「外国語は難しい」といっていた。
外国語ができるようになるということは、その国のどのレベルに達するかということである。
小学生レベルなのか中学生レベルなのか高校生レベルなのか。
1 日系人たちの苦労
海外の日本人や日系人も、言語の問題で苦労している。
以上の多くの例が、外国語がいかに大変か、外国で生活するのがいかに大変かを教えてくれる(日本企業の駐在員は例外である。彼らは企業の保護下にあり苦労はまったく無い)。
2 民間企業は、政府系機関や大手新聞社より賢い
日本人の英語が下手なため貿易赤字になったという話は今までに1回も聞いたことがない。 民間企業では英語が必要な人は、怪しげな首相私的懇談会のおせっかいがなくても、きちんと勉強しているのである。 英語、英語と騒いでいる懇談会の顔ぶれを見ると、政府系機関、大手新聞社など競争と無縁な人たちばかりである。 もしすべての日本人が英語、英語と騒いだらどうなると思っているのだろうか。 日本の産業は成り立たなくなる。
そもそも学者や新聞記者は、行政府とは独立しこれを批判できるところに意義がある。 法律で決められた審議会であれば、各界代表として参加する意義もあろう。 私的懇談会に出ても、政府に都合よい人を人選されるか、御用学者、御用記者になるだけである。しかも政府の御用ならまだしもアメリカ大使館の御用では困る。
3 コーヒーを入れないクリープ
英語は習得にとてつもない時間を要する。 しかし英語ができるというだけで仕事がある訳ではない。 英文科の教授以外は職業がないと見たほうが良い。 英会話学校の教師や翻訳などは給料が安く扶養家族がいる人ではとうていやっていけないだろう。 英語以外の能力が優秀で英語が苦手な人をクリープを入れないコーヒーだとしよう。 英語だけしかできない人は、コーヒーを入れないクリープのようなものである。まずくて飲めない。 このような人が自己主張したくて英語公用語を言い出したとしか考えられない。
4 日本語を話す外国人を大切にしよう
アジア各国には日本語を学んだ人がたくさんいる。 アメリカ人にも日本語を話す人はけっこう多数いるものである。 海外の日本企業の日本人は英語で話したがるため、こういう外国人が日系企業に雇用されないという話をよく聞く。 英語の勉強はオフィスではなく自宅でやってほしい。 日本語を話す外国人は日本にいようと海外に住んでいようと、必ず日本のために役だってくれる。 もっと大切にしよう。
10年程前に日本の貿易黒字について、ある政治家が「日本人はほとんど物にならないとはいえ全員が英語を勉強する。アメリカ人も日本で売りたかったら日本語を勉強しろ」と言ったことがあるが同感である。 このくらい気概のある政治家は、もう日本にはいないのだろうか。
5 新幹線、海外旅行、インターネット
欧米日以外の国から海外に留学できる人はごくわずかである。 だから学生の質も高い。日本は円高のおかげで本来、留学出来ないような人たちが大挙留学するようになった。 TOEFLで日本人の平均がアジアで最低だというのは、ぜいたくな悩みである。
小渕さんが英語、英語とはしゃいでいるのを見ると、初めて新幹線に乗った40年前の日本人を思い出す。 小渕さんや一部の日本人は、海外旅行に行って帰り、英語、英語と騒いでいるだけである。
6 自民党は「金持ち党」と名前を変えた方がよい
政党にはそれぞれ良いところがある。 日本の政党を評すれば「文化的には自民党、安定度では民主党、理想的には社民党、清潔度では共産党」といったところだろう(この当時、公明党と自由党は連立与党だった)。 その自民党が英語第2公用語を言い出したとなると、この政党の特長は何なのだろう、と思ってしまう。 古今東西を問わず、保守政党は金持ち有権者の票だけでは選挙に勝てない。そこで文化的保守層や宗教層を取り込んで来たのである。 文化的に失格だとすると、自民党は高額所得者だけのための政党ということになる。 「金持ち党」と改名したほうが良い。
7 ポルポト派と小渕政権の共通点
東西冷戦下において我々は共産主義を「唯物論だ。人間を生産手段としか見ない。」と批判してきた。首相の私的諮問機関の文書を読むと、人間を生産手段、国際競争力の道具としか見ていないことが判る。 小渕政権とポルポト派は唯物論という点で共通性がある。
それにしても「英語を第2公用語にしろ」などは、よく言えたものである。 本当に実行すれば、日本史上最悪の文化破壊者として名を残すであろう。 カンボジアの文化を破壊したポルポト派とは、この点でも共通性がある。8 世界と日本のために議論しよう
英語をこれ以上重視する必要はない。 回りを見渡してみよう。日本では英語が氾濫しているではないか。 画田引水ではなく世界のため日本のために議論すべきである。