千二百七十七 役所と公共産業は感性が悪い(2.物忘れ検診)
平成三十一己亥年
三月一日(金)
母に最近、物忘れが目立つやうになった。介護保険の方の話では、物忘れ外来があるとのことだった。早速インターネットで調べると、あちこちの自治体で「物忘れ検診」を無料で行ってゐる。そこで、これを受診することにした。
今回は途中までは、医療機関、役所の批判みたいに見えるが、最後の結論は異なる。医療機関と役所の担当者はよくやってくれてゐる。まづインターネットに載ってゐる指定の医療機関に電話を掛けると、お母さんは今までに当院を受診したことがありますか、と訊く。無いと答へると、電話口の方(私の事ですが)は受診したことがありますか、と訊く。これも無いと答へると、暫く待ってくださいと電話が保留になったまま、いつまでも待たせる。電話を切ったあと市役所に、受診したことが無い人は検診を受け付けないのなら、そのことをインターネットに明記すべきだと伝へたところ、役所から医院に問ひ合はせてくれて、たまたま医院が忙しくて時間が掛かったと云ふので、納得した。別の医院を幾つか紹介してくださった。
三月二日(土)
昨日紹介してもらった医院に電話を掛けると、一次検診はしてゐないが、一覧に載ってゐるかと訊かれたので、役所に教へてもらったと答へて電話を切った。念のためインターネットで調べると、ちゃんと一覧に載ってゐる。
次に、母が糖尿病で通院する病院も載ってゐることに気が付いた。母の通院日に検診を受けられないか訊くと、専門医がゐないからその曜日は駄目だと云ふ。母の通院に毎月付き添ふため私の有給休暇は3月末まで0.5日しか残ってゐないと云ふ事情もあり、土曜に受け付けてもらへる別の医院をやっと見つけた。そして検診を受けることができた。
三月三日(日)
検診内容は質問が三つで、どれも簡単なものだ。これなら医師ではなくても、家族が質問することも可能だ。痴呆症の老人は自分が痴呆症に罹ったことに気が付かないから、家族が質問して結果が出ても、本人は認めようとしないだらう。だから医師の診察が必要なのだが、痴呆症ではない普通の物忘れでわざわざ時間を取った人にとっては不満が残る。
この場合は、テスト内容を公開し、家族に予め痴呆症かどうかの診断をさせる。該当者が医院に行くやうにしないと、時間と役所の予算が無駄になる。
なぜ医院が、過去に受診した人以外の受入れを渋るのか、別の医院では一時検診を断るのか。その理由も判った。初めて行った医院でこの程度の質問のために2時間10分(往復で10分づつを含む)を費やすと、初めての医院なら文句の一つも云ひたくなるだらう。
この検査は、あちこちの自治体で行はれてゐる。こんなことが今まで続いた理由は、過去のやり方を踏襲したからだ。本当に検査が必要な人もゐる。しかし不必要な人も多い。だからこの検診は痴呆症を調べるためであり、痴呆症は普通の物忘れとは異なることと、検診の質問内容(実際のときは単語や図形を変へるとよい)を公開すべきだ。
この検査でどれだけの税金が使はれるのだらうか。医院や市の施設に貼るポスターも全国では膨大な金額になる。(終)
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