都電を動かしていた人たち
昭和31年に都電を動かしていたすべての人を紹介します。(昭和31年12月「東京都軌道係員規定」より)
軌道係員規程(大正十二年十二月鉄道省令第六号)に基き、東京都交通局軌道係員を運輸係員、工務係員、電気係員及び車両係員に分け、以下職制を定める。
1、運輸係員
- 電車部長は、運輸、運転、車両の設計、管理並びにこれに付帯する一切の業務を掌理し、所属係員を指揮監督する。
車両の設計業務は、電車部長と電車両工場長の双方に含まれています。
- 営業所長は、電車部長の命を受け、所管系統の運輸、運転、車両の検査、保守、修理、乗務員の勤務並びにこれに附帯する業務を処理し、所属係員を監督する。
- 管理係長は、営業所長の指揮を受け、これを補佐し、
乗車券及び乗車料金の受払並びに保管に関する業務を処理し、所属係員を監督し、
所長事故あるときは、その職務を代行する。
- 運輸係長は、営業所長の指揮を受け、所管系統の運輸、運転に関する業務を処理し、
所属係員を監督する。
- 運輸係長は、管理係長が不在のときは、その職務を代行する。
- 車両係長は、営業所長の指揮を受け、
車両の検査、保守、修理並びに車庫に関する業務を処理し、所属係員を監督する。
- 業務主任は、営業所長の指揮を受け、
乗務員の運転の取締及び事故障害の処理及び
復旧に関する業務に従事し、所属係員を監督する。
- 操車所主任は、営業所長の指揮を受け、操車所業務に従事し、
所属係員を監督する。
操車所の責任者は操車所主任。すると営業所に吸収される前の車庫の責任者は車庫主任だったのでは。発車所はどうだったのでしょうか。
- 操車係は、営業所長の指揮を受け、操車業務に従事する。
- 線路係は、営業所長の指揮を受け、
乗務員の運転指導、事故障害の処理に関する業務に従事する。
業務主任と線路係は、名称からは想像できない仕事内容ですね。業務主任は乗務員の点呼、線路係は事故の際の現場責任者では、と想像しています。
- 発車係は、営業所長の指揮を受け、起終点において本線路運転車両の発着を記録し、配車業務に従事する。
操車業務と配車業務の違いは何でしょうか。三田営業所の元運転手さんにご子息から聞いてもらったところ、営業所の操車係へ出向き車輌を受領してから本線に出た、配車係は営業所にはいなかった、とのことです。配車業務とは係員規定にあるように発車係が発着を記録する業務のようです。錦糸堀の江東デパートの四つ目通り側一階に操車所がありましたが、操車係、信号士、発車係の3つを兼ねていたのでしょう。もし配車業務に運転時刻変更や運転整理の指示が含まれていれば、発車係、信号士の2つを兼ねていたことになります。錦糸堀操車所には転轍器の切替と表示を行う操作板がありました。
- 車両修理係は、営業所長の指揮を受け、車両の修理作業に従事する。
- 出入庫係は、営業所長の指揮を受け、本線路運転車両及び構内車両の出入庫及び入換作業に従事する。
- 検車係は、営業所長の指揮を受け、車両の検査作業に従事する。
- 運転技術指導員は、電車部長の命を受け、
乗務員の指導教育及び訓練に関する業務を担当し、運転の安全と事故防止を指導する。
- 信号士は、営業所長の指揮を受け、転てつ器及び信号機並びに連動装置の取扱に従事する。
- 運転手は、営業所長の指揮を受け、動力車の操縦に従事する。
- 車掌は、営業所長の指揮を受け、乗客の輸送、乗車券の発売並びに収集の業務に従事し、
車内の秩序を保持する。
- 切符係は、営業所長の指揮を受け、乗車券の発売並びにこれに付帯する業務に従事する。
- パトロールカー乗員は、電車部長の命を受け、
事故障害復旧処理及び乗務員の運転指導監督に従事する。
- 車掌を除く運輸係員は、特に電車部長の命があるときは、動力車の操縦に従事する。
- 運輸係員は、職務の状況により二以上の運輸係員の職務を兼ねることができる。
2、保線係員
- 工務部長は、線路、諸建造物、保安設備(電気部長所管のものを除く)の建設、
改良、保守並びにこれに付帯する一切の業務を掌理し、所属係員を指揮監督する。
- 軌道出張所長(以下、職務内容は省略します)
- 軌道出張所技術主任
- 保線職員
保線職員までが吏員、組長から先は傭員です。
- 組長
- 組長補
- 技工
- 保線係員は、職務の状況により二以上の保線係員の職務を兼ねることができる。
3、電気係員
- 電気部長は、電気施設の建設、改良、保守並びにこれに付帯する一切の業務を掌理し、
所属係員を指揮監督する。
- 電路出張所長は、電気部長の命を受け、電線路、通信線路、信号機、連動装置、踏切警報機、
電燈及び動力設備等の建設、改良、保守及び維持管理並びにこれに付帯する業務を処理し、
所属係員を監督する。
電気部には、電路出張所、変電区の2種類の組織から構成されています。
- 電路出張所長補佐(以下、職務内容は省略します)
- 電路出張所主任
- 電路出張所技術職員
- 電路出張所組長
- 電路出張所組長補
- 電路出張所技工
- 変電区長は、電気部長の命を受け、変電所設備の建設、改良、保守及び受電または配電並びに
これに付帯する業務を処理し、所属係員を監督する。
- 変電区長補佐(以下、職務内容は省略します)
- 変電区変電所長
- 変電区主任
- 変電区職員
- 技工
- 電気係員は、職務の状況により二以上の電気係員の職務を兼ねることができる。
4、車両係員
- 電車両工場長は、車両及びこれに付帯する諸機械の設計、製作、改良及び
試験、検査、修繕並びに資材に関する一切の業務を掌理し、所属係員を指揮監督する。
部長は指揮監督、営業所長や出張所長は監督という表現を電気係員までは
用いています。電車両工場長が部長扱いであることが判ります。
- 材料課長は、工場長の指揮を受け、材料の出納、整備、管理に関する業務を処理し、
所属係員を監督する。
電気係員までは、部長の命を受けまたは営業所長や出張所長の指揮を受けだったのに対し、電車両工場長の指揮を受け、という表現を用いています。本局と事業所の違いでしょうか。
- 検査課長は、工場長の指揮を受け、車両、購入、製作及び
修理品の検査、技能員の再教育、車両資材の研究試験に関する業務を処理し、
所属係員を監督する。
- 工作課長は、工場長の指揮を受け、車両及びこれに付帯する諸機械の
設計、製作、改良及び修理並びに資材の調査に関する業務を処理し、
所属係員を監督する。
3つの課長職の業務内容を読むと、工場の役割が理解できます。
- 車両技術主任は、所属課長の指揮を受け、車両及びこれに付帯する諸機械の
設計、製作、改良修理及び検査並びに資材の調査研究に関する業務(以下、「担当業務」という)
を処理し、所属係員を監督する。
- 車両技術職員は、所属課長の指揮を受け、担当業務に従事し、所属係員を指導する。
- 車両組長は、所属課長の指揮を受け、車両及びこれに付帯する諸機械の
製作、改良修理及び検査並びに資材に関する作業(以下、「担任作業」という)
に従事する。
職員が業務なのに対して、技能職は作業という表現を用いていますが、運輸係員の章では技能職である運転手、車掌に業務という表現が使われています。
- 車両技工は、所属課長の指揮を受け、担任作業に従事する。
- この章に定める係員は、特に工場長の命あるときは、動力車の操縦に従事する。
他の係員にあった、二以上の係員の職務を兼ねることができる、という表現が車両係員にはありません。
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